 |

織部型灯籠 |
|
露の滴る植栽の傍らに、静かな水面のほとりに据えられた石灯ろう。石灯ろうには、たったひとつで、その庭の雰囲気を決めてしまうほどの存在感があります。石灯ろうの穏やかな灯は、夜の庭に表情を与え、ひととき現実を忘れさせてくれます。
木の葉越しに揺らめく光の演出を意図する石灯ろうは、まわりの植物に半ば隠れるように、ひっそりと据えられます。水辺の石灯ろうは水面にその灯を映し、水に風情を与えます。また、庭の路をほのかに照らし、つくばいの傍らでは鉢あかりとして手元を照らします。石灯ろうは、演出装置、装飾、照明として、日本式庭園の美しさを奥の深いものにしているのです。 |
|
 |
 |

小屋棒型灯籠 |
|
夜の庭を幻想的に演出する石灯ろうは、陽光の中では、また別の味わいをもって庭をひきたてます。きめ細やかな石肌に美しく苔をつける出雲石灯ろうは、庭の緑と調和し、見る人の気持ちを自然になごませてくれます。
出雲石灯ろうは、来待石という石を素材に作られます。来待石は、粒子が細かく柔らかいため、繊細な細工を施すことができる石材です。しかも、表面の細かい凹凸が水分を保つため、雨露がかかると苔が付き易くなるのです。採石後間もない来待石は、淡い黄緑色をしていますが、日が経つにつれ、表面が酸化されて色合いが茶褐色に変ります。色が代わり、苔がつくことで、出雲石灯ろうは次第に風合を増し、庭の眺めに溶け込んでいくのです。 |
|
|
| |
 |
|
利休、珠光(しゅこう)、紹鴎(じょうおう)、織部(おりべ)、遠州(えんしゅう)、宗和(そうわ)、石灯ろうには彼ら茶人たちの名前をいただく様式が、数々あります。石灯ろうの仄かな灯とその侘びた様子は茶人たちに好まれ、茶室づくりが盛んになるとともに、茶庭(ちゃてい)には欠かせないものとなっていきました。
茶室という舞台が整うと、さまざまな時刻に茶席が設けられるようになりました。夜の帳の中で行われる「夜噺(よばなし)」はそのひとつです。趣を大切にする茶庭を照らすには、松明ではあからさま過ぎるため、控えめな明るさで「寂び」を感じさせる石灯ろうの灯が良しとされたのです。
茶庭に石灯ろうを最初に用いたのは利休だと言われています。京都で墓所の石灯ろうの残り灯が、暗夜に揺れ隠れしている景色を見て風情を感じ、庭に石灯ろうを入れることを思いついたのだと伝えられています。
石灯ろうは、夜の茶庭では照明と演出装置を兼ねたものでした。それらの機能を求められない昼の間、石灯ろうには添景としての存在感が求められました。庭の眺めに調和し、かつアクセントとなるように、石灯ろうは改良が重ねられ、様々な様式が産み出されたのです。
|
|
 |
|
|
 |