多摩織の魅力


絹糸がささやく多摩織の魅力
製織  絹は繊維の宝石。美しい織物となる絹の糸は、蚕によって生み出されます。多摩の丘陵には遥か昔から桑の木が生え、土地の人々はその葉を蚕に与えて繭を作らせました。平安時代初頭の文献には、この一帯は生糸や絹の産地として記されています。桑、蚕そして絹糸や織物と共に歩んだこの地の人々の、長い歴史の中から作り出された絹織物が多摩織です。
 ひと口に絹織物といっても、用いられる絹糸の形態はさまざまです。繭を解いて糸にした「生糸(きいと)」、2匹の蚕によって作られた繭を解いた節のある糸「玉糸(たまいと)」、繭をほぐして作った真綿を紡いで糸状にした「紬糸(つむぎいと)」などがあり、用いる糸によって、仕上がりの風合も異なります。さらに、これらの糸に精練・染色を施し、織技法と共に巧みに使い分けることで、多彩な製品が作りだされています。
多摩織の5つの表情
 お召、紬、風通、変り綴、綟り。多摩織には5つの品種があります。いずれも、工程の重要な部分は、熟練した職人の手作業によって行われる伝統ある織物です。それぞれの織物にさまざまな魅力があり、絹織物の奥の深さを物語っています。

●お召織
(おめしおり)
表面を覆う細かいシボ(しわの1種)が特徴の織物です。緯糸(よこいと)には1mあたり3000回という強い撚りをかけた糸を使います。右撚りの緯糸と左撚りの緯糸を交互に使い、糸の撚りが戻る力を利用してシボを作り出しています。
●紬織
(つむぎおり)
微妙な凹凸から生まれる風合が特徴の織物です。その風合は、緯糸に玉糸あるいはつむぎ糸を使うことによって作り出されます。
●風通織
(ふうつうおり)
織地が二枚重ねになって模様を表現する織物です。表面の模様の色が、裏面の地色になる、リバーシブル構造に特徴があります。
●変り綴織
(かわりつづれおり)
綴織(つづれおり)とも呼ばれる朱子織の変化した織物です。多色の緯糸を使って、絵のように複雑な模様を織り出すことができます。
●綟り織
(もじりおり)
経糸どうしが搦みながら緯糸と組んで、糸と糸の間に隙間のある織物です。レースのような透明感があります。夏の着物や帯などによく用いられる「紗」は綟り織のひとつです。
多摩織と《桑の都》八王子
 現在、多摩織は、八王子市そしてあきるの市の一部の地域で作られています。八王子は《桑の都》とも呼ばれます。江戸時代には定期的に絹市が立ち、地元だけでなく周辺地域からも生糸や繭、絹織物などが集まりました。織物づくりの人々は、全国各地の産地から積極的に織物技術を取り入れ、独自の織物に高めていきました。そうして作り出された織物が八王子織物です。
 八王子織物は、明治時代に入るとジャカード機や力織機を導入するなどして近代化を図り、現代産業への転身に成功しました。その一方で、数百年の歴史を伝える織物の技法も守り続けました。機械化の進む八王子織物の中にあって、伝統の技を駆使して作られる織物は《多摩織》と名付けられ、1980年(昭和55年)に、国の伝統的工芸品に指定されています。
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八王子織物工業組合