新しい鉄の世界 新しい鉄の世界 1. 鉄の可能性を探る
2. 今を感じるデザイン
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1. 鉄の可能性を探る

 南部鉄器の産地岩手県は昔から鉄の産地として有名です。その長い伝統を土台にして、国内屈指の鉄の研究を行っている岩手県工業技術センターの町田さんに、鋳物の鉄の最前線についてうかがいました。


強度のある鋳物をつくる

 鋳物は型に流し込んで成形します。ですから鋳鉄(ちゅうてつ)は、熔けた鉄を流れる状態にするための成分として炭素を多く含むことが必要です。しかしこの炭素は細長い黒鉛の状態で鋳鉄中に存在するため、でき上がった鋳物においては、黒鉛の部分と鉄の部分で熱伝導率のムラができてしまいます。また黒鉛は鉄よりも脆いので、黒鉛の細長い形に負荷がかかると割れやすいということもありました。

 しかし、最近開発されたADI(Austempered Ductile cast Iron-オーステンパー球状黒鉛鋳鉄)では、鋳鉄中の黒鉛が球状の形態をとるため均一に分布するようになり、鋳物でも鋼(はがね)より強靭なものを作ることができるようになりました。こうしてつくられたADI鋳物に、特殊なノウハウで焼入れを施すことによって、従来では考えられなかった鋳物の刃物が誕生します。


普通の鋳鉄の組織。
線状の黒鉛が見られます。

ADIの組織。
黒鉛が球状になっています。

 ADIは成分の調整と加熱方法によって、鋳鉄中の黒鉛を鍛造物と同じような球状の形態で均一に分布にさせることを可能にしました。しかも鋳物としての作業性は従来のままのため、これまで鍛造物や焼結でしかできなかった鉄製品と同じ強度をもつ鋳造品が、簡単に量産できるようになりました。


ADIで作られたナイフ
 「熔接の利かない複雑な形をした刃物や削りだしの難しい精密な形のものも鋳物でなら簡単につくることができます。これまで彫刻のように形を削り出す所から始めていたものが、最終的な仕上げの研磨で済むようになるわけです。

「歯車や自動車部品など、いままで刃物で削り出してつくっていたものは劇的にコストが安くなるでしょう、おそらく今の半額ぐらいでできるんじゃないかという見通しはもっています。」と町田さんは語ります。

 現在すでに一部では実用化されている新技術ADIは、これからがますます期待され南部鉄器の未来にまた一つの可能性を示しています。


軽い鋳物---伝統工芸品の技術を活かして

 より軽い鉄製品をつくるためにスポンジ構造の鋳物、発泡スチロールのような形態とアイデアはいろいろ出てきていますが、いまの段階では薄くつくるというが最大の軽量化です。

「伝統工芸の手技の焼き型でつくると2ミリぐらいの厚さに作ることが出来るので非常に軽い鋳物ができます。大量生産の砂型の場合は、どうしても型に濡れた砂をつかうので、鉄の冷えるスピードがものすごく早くて、2ミリの厚さでやると鉄が回らないうちに固まってしまうんです。
 型を素焼きの焼物でつくる焼き型は型が乾燥しているため、鉄の冷却速度が遅いので薄いものでも鉄が回るということなんです。そこから、鉄瓶や茶釜の技術を使って鍋をつくろうという人たちも出てきたんです。」


牡蠣(かき)の殻で廃鉄骨をリサイクル

 鉄は昔からリサイクル率の高い資源の一つでした。しかし、技術の発達とともに鉄にさまざまな微量元素を入れて加工することが多くなり、昔のようにシンプルにリサイクルすることが難しくなってきてしまいました。阪神大震災では膨大な廃鉄骨が生じたため、各地で廃鉄骨を再生する方法を見い出すための研究が進められています。

 鉄骨には伸縮性を与えるためにマンガンが入っています。しかし、このマンガンは鋳鉄には邪魔な成分です。岩手県工業技術センターでは、廃鉄骨を熔解する時に牡蠣の殻を投入すると、牡蠣殻が熔鉄中にあるマンガンを吸い込んで取り除くことを発見しました。
 このマンガンを含んだ牡蠣殻は、鉄骨の熔解後には粉末状の物質の塊となって残ります。また、残った塊は細かく砕いて畑の肥料として活用することができます。岩手県は日本有数の海産物の産地ですから牡蠣殻は地元で入手できます。さらに精練した鉄は南部鉄器の原料となり、精練工程で生じた物質は肥料となります。「そこまでうまくいくかどうか分かりませんが」と笑う町田さんですが、うまくいけば県内の産業にとっても非常にメリットが大きいものとなるでしょう。


2. 今を感じるデザイン


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