【クローズアップ】
 
伝統と自由な空気が調和する笠間焼
 
江戸時代、安永年間(1772年〜1781年)からの伝統を持つ笠間焼。伝えられたのは技術だけではない。土への慈しみ、絶え間ざる研究心、そして創造の喜びもまた受け継がれてきた。赤褐色の粘土をおもに使用し、独特の温かみのある製品を産み出し続けている。
 
 

作品の一つを持つ額賀章夫さん
伝統、そして、それを基礎とした自由闊達な空気

江戸時代、安永年間、箱田村(現在の笠間市)の久野半右衛門が信楽の陶工、長右衛門の指導で焼きものを始めた。半右衛門が築いた窯を娘婿の瀬兵衛が継ぎ、長右衛門の弟・吉三郎とともに盛り立て、今に継がれるような優れた焼きものを創り上げた。これが笠間焼の起源である。以来200年以上の師から弟子へ、親から子へと受け継がれてきた伝統と歴史を持つ笠間焼、意外にも格式ばった形式やお堅いしきたりなどはほとんどない。そんな自由な気風が伝統のなかにも個性あふれた新たな作品を産み出しつづけ、若い陶芸家も数多く活躍している。笠間焼に後継者不足といった声は聞かない。今回は若手の陶芸家の一人、額賀章夫さんにお話を聞いてみた。
 
 
使って頂くお客様への思いやり

自由闊達な気風、若手の陶芸家も多いと聞いて、創作意識の強い芸術家肌の陶芸家のイメージを頭に描いていた。しかし、そんな先入観は額賀さんにお会いしてもろくも崩れ去った。「雰囲気の良い作品、お客様が使いやすい作品を目指しています。」美術的センスだけでなく、お客様に使って頂く以上、親しみやすく、使いやすいものであるべきだ。そんな信念をお持ちの額賀さん。彼の作り出す作品は、ご本人同様、柔らかなぬくもりがある。そして、実際の使い心地も最高である。コーヒーカップを手に取ると、そのフィット感に思わず感激してしまった。今までに、ここまでしっくりくるコーヒーカップに出会ったことがなかった。食器や花瓶、コーヒーカップなど、ふだん何気なく使うものを多く作り出している笠間焼、決して押し付けではないお客様への思いやりの心。この心こそが笠間焼の真髄である。

実によく手にフィットする額賀さん作のコーヒーカップ
 
伝統は創作の母である

自由であるといっても200年近い伝統はしっかりと受け継がれている。自由闊達な気風は伝統を壊すものではなく、逆にその継承のための大きなエネルギーとなっている。額賀さんも笠間焼の過去の歴史・作品を自分自身でかみしめることで新たな創作の源としている。新しい物を創作していく生みの苦しみは絶えず陶芸家を苦しめる、そんな時支えになるのは、お客様の存在、そして受け継がれてきた伝統なのである。
 
 

額賀さんの作品と人柄にほれ込み額賀さんのもとで修行する森永さん
笠間に行ってみよう

焼きものの里、笠間。笠間市内には数多くのギャラリーがあり、実にさまざまな笠間焼の世界が気軽に楽しめる。日常生活のなかで気軽に使えそうな、手ごろな作品から、フォーマルな場所に似合う作品。かわいい模様のものがあったり、素朴な雰囲気のものがあったり、ちょっとした記念日に似合いそうなお洒落なものまで。実に個性とバリエーションにあふれている。笠間駅前でレンタサイクルを借り、のんびりとギャラリーめぐりをしてみるのも良いだろう。ちょっと郊外に出れば小鳥のさえずる豊かな自然の空気も満喫できるし、観光名所も多い。 もっと深く、笠間焼を感じたいという人は笠間芸術の森公園に行くといい。さまざまな作品を集めた茨城県陶芸美術館、陶芸体験の出来る笠間工芸の丘などがある。
 
 
<職人プロフィール>

額賀 章夫
(おおや ただひろ)
1963年生まれ。
東京造形大学時代に焼物に興味を持つ。
使いやすさ、よい雰囲気のもの、使っていただくお客様への思いやりをこめて作り続けている。
 
 

 こぼれ話 


笠間焼の時計
笠間焼の世界

日頃、日用に供する食器や花瓶など身近な作品が数多くある笠間焼。温かく素朴な雰囲気のあるものから、芸術性の高いものまで実にバリエーションに富んでいます。
最近では、陶壁や壁画、陶板、時計、オブジェなどインテリアとして味わいのある作品も数多く世に出されています。赤土を利用した笠間焼独特の温かい風合いが、あなたの部屋をほっとするリラクゼーション空間に変えてくれるはずです。
笠間市に、「クラインガルテン」という農芸と陶芸のハーモニーをテーマとした滞在型市民農園がオープンします。ここでは笠間焼のオブジェが表札代わりに各戸の玄関に設置されています。
ぜひ、笠間焼の持つ暖かい雰囲気を体感しに笠間まで足を運んでみましょう。ゆっくりと流れる時間と笠間焼があなたを癒してくれるはず。


2001年笠間市にオープンした滞在型市民農園クラインガルテン